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「……そう言えば、ユージ」
「ん?」
「私まだ、あの時の最後の言葉、ちゃんと聞いてないんですけど」
ごほん。と、わざとらしく咳払いをすると、ユージが気まずそうに空を仰いだ。
「……アレ?」
「アレ」
小首をかしげるユージに、私はしっかりと頷く。
立ち止まって、聞くまで動かないと態度で示せば、顔を赤くして息を吐いた。
「一回だけだぞ」
松葉杖を持ちかえて、私の正面に立つ。
鼻をぴくりと膨らませて、ユージはそっと私の耳元に唇を寄せた。
「愛してる」
私の薬指に光るのは、少し大きなエンゲージリング。
顔を離して、照れくさそうに「伝わってる?」とユージが聞いた。
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