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『家族……ねぇ』
ユージが、少し遠くを見ながら神妙に呟いた。
『いても、捨てた子供のことなんて、覚えてねぇよ』
「ユージ……」
覚えて無いなんてこと、あるわけない。
そんな軽々しいことは、私には言えない。
『でも、それぐらいしかねぇのかな』
少しだけ間をあけて、ユージは机に置かれている鞄を指差した。
ユージの荷物は、事情を詳しく説明して、私が預かっている。
『外のポケットのとこに、住所をかいた、紙が入ってる』
「え?」
『オレの、母親の住んでるとこ』
ユージの、お母さんの?
私は急いで、ユージの鞄を探った。
ユージが母親の住所を知ってる? どうして…。
『話があったから、興信所とか使って、調べた。黙ってて悪かったよ』
ユージに、母親の話を聞いたことがある。
顔も覚えてない。もう、会いたいとは思わない。
そう言ってた。
……どうして、今になって?
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