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「お母さんには、会えたの?」
私の質問に、ユージはすぐには答えてくれなかった。
迷うような素振りをみせてから、口角を持ち上げた。
『会ったよ。誰だ、知らないって言ってた。だから、無駄だと思うけどな』
そんな……。
全然、知らなかった。
「何で言ってくんなかったの」
『だから、黙ってて悪かったって』
私は、ギュッと紙を握りしめた。
ユージのことを捨てたお母さんに、私の気持ちが負けてるわけ無いとおもうけど、今はそれしか縋るものがない。
「取りあえず、行ってくる」
『チサ』
自分の荷物を抱えて背中を向ける私を、ユージの声が呼び止めた。
『たぶん、無駄だと思う。だから、お前は何も気にするなよ』
ユージは、優しい。
その言葉に頷いて、私は病室を飛び出した。
時間は無い。
ユージを救うため、走れ私!
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