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車内を流れる到着のアナウンスで、目が覚めた。
うっすらと浮かんだ涙を乱暴に拭って、席を立つ。
昔を振り返ってる場合じゃない。
絶対、ユージを助けるんだ。
新幹線を一歩でれば、蒸すような暑さで、目を細める。
ひとまず駅から出て、銀行でお金を下ろして、タクシーを捕まえた。
土地勘のない私には、この住所がここからどれぐらい離れてるかが、わからない。
ちゃんとユージに聞いてくればよかったなぁ。
……いや、ユージがちゃんと説明するべきだよねっ。
帰ったら文句いおう。元気になったら、新幹線代とタクシー代も請求するんだ。
元気になったら。絶対に。
「ちょっと走りますけど、高速にのってもよろしいでっか?」
独特のイントネーションで喋る運転手さんに、「お願いします」と頭をさげる。
「出来るだけ、急いでください」
どれぐらい時間がかかるのか、怖くて聞けなかった。
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