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どんどんと、景色が流れていく。
時計の針は、休まず動き続ける。
堪らずあとどれくらい掛かるのか聞こうとしたとき、ようやく車が止まった。
「ありがとうございました」
料金を支払い、お礼を言ってタクシーから降りる。
どうしよう……、ここまでが1時間弱。
ユージのお母さんを説得して一緒に来てもらうのに、いったいどれくらい時間がかかるんだろう……。
「弱気になっちゃ、ダメだ」
頭をふって、意識を切り替える。
いまユージを救えるのは、私しかいないんだから。
ユージのお母さんが住んでいるという家は、建売りの住宅街のなかにあった。
そろそろ、夕暮れどき。
のどかな住宅街では、学校からの帰り道を急ぐ学生に、買い物帰りのお母さんたちが行き交っている。
……ユージのお母さんは、この景色の中で生活をしてるの?
ユージを置いて?
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