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ユージは1人で、この光景を見たんだろう。
自分のいない日常を。
ふいに溢れた悔しさを胸に、私は紙に書かれた住所に急ぐ。
一言文句を言わなきゃ、気がすまない。
タクシーに乗って来ただけあって、家はすぐそばだった。
表札に書かれた名字は『池田』
渡された紙にも、池田美里と書かれているので、たぶん間違いない。
再婚したんだ。
ユージを捨てて、20年近く。
当たり前と言えば、当たり前なんだろうけど。
呆然と家を見上げる私の横に、子供が走ってきた。
「お母さん! ただいま」
思わず、心臓が跳ねる。
隣に走ってきたのはランドセルを背負った女の子だ。
怪しげに横目で私をみながら、インターフォンを押している。
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