思い出の名前

8/29

7354人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ
「はいはい、ちょっと待って!」  よほど私が怪しいのか、何度もインターフォンを鳴らす女の子に、急いで母親がでてきた。  立て付けのいい音を立て扉が開き、中から現れた女性に息を飲む。  ……ユージの、お母さんだ。  そっくり。 「おかえり、早く入りなさい」  母親は娘を家の中にいれ、1度扉を閉めようとしてから、ためらうように私に声をかけた。 「……あの、何かご用ですか?」  ユージそっくりの顔で訊ねられ、思わず苦笑する。  そしてそのまま頭をさげた。 「はじめまして、田中知抄といいます。祐司さんと、お付き合いをさせていただいているものです」  ユージのお母さんの顔が凍りついたのが、分かった。 「祐司さんの、お母さんですよね?」
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7354人が本棚に入れています
本棚に追加