思い出の名前

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 夕日の下で必死にドアを叩く私を、道往く人が見ている。  すすり泣くような声で、「帰って」と言うユージのお母さんの声が聞こえた。  この人は、いまここにある生活を守りたいんだろう。  私も、同じなんです。ただ昨日と同じ、ユージのいる生活を守りたいの。 「ユージを、愛してくれる人は、貴方しかいないから!」  それとも、あなたを連れて帰っても無駄ですか?  ユージを愛してはくれませんか?  この心に浮かんだ感情をどう言葉にしていいのかわからなくて、私は必死で拳を扉にたたきつけた。 「ユージ、死んじゃうんです!」  流れ出る涙と共に叫べば、扉の向こうでお母さんが息を飲む気配が伝わった。 「事故にあって、このままじゃ死んじゃうんです」  愛してると言って貰わなきゃ死んでしまうとか、そんな説明をしている余裕はなかった。  信じて貰えるかわからないし、説明している時間が惜しい。  ただ、この人に一緒に来て貰 わなければならない。  
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