思い出の名前

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 この人に今かける言葉を、私は知らない。  同情なんて出来ないし、優しいことも言えそうにない。  自分勝手な私は、とにかくユージのことしか頭になかった。  この人が心変わりする前に、気が変わる前に、連れ去ってしまわないと。  その一心だった。 「タクシーは、表通りにいけば拾えると思います」  ユージのお母さんの言葉に小さく頷いて、私は小走りに進み始めた。  とにかく、急がないと。  時計を見て、きつく瞼を閉じる。  病院をでてから、すでに6時間以上が経過していた。
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