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指輪が欲しいとねだったことがあった。
付き合って、3年目ぐらいの時だったと思う。
結果から言えば、ユージは私に指輪をくれなかった。
指輪は嫌いだから、とそれだけ言って。
お金がないなら無いって言えばいいのに!
そんな風にすねていた私には当然、ユージの心の奥なんて見えるはずもなくて……。
静かなタクシーの車内。なぜかそんなことを思い出した私は、ユージのお母さんの薬指を見た。
白い指には、小さなダイヤの指輪がはめられている。
「綺麗な、指輪ですね」
ふと口から出た言葉に、ユージのお母さんは肩を強ばらせて右手を左の薬指に被せた。
あ、嫌味に聞こえたかな……。
「あの……、ユージは指輪が嫌いだっていってて、私、貰えなかったんです」
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