思い出の名前

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☆★☆  指輪が欲しいとねだったことがあった。  付き合って、3年目ぐらいの時だったと思う。  結果から言えば、ユージは私に指輪をくれなかった。  指輪は嫌いだから、とそれだけ言って。  お金がないなら無いって言えばいいのに!  そんな風にすねていた私には当然、ユージの心の奥なんて見えるはずもなくて……。  静かなタクシーの車内。なぜかそんなことを思い出した私は、ユージのお母さんの薬指を見た。  白い指には、小さなダイヤの指輪がはめられている。 「綺麗な、指輪ですね」  ふと口から出た言葉に、ユージのお母さんは肩を強ばらせて右手を左の薬指に被せた。  あ、嫌味に聞こえたかな……。 「あの……、ユージは指輪が嫌いだっていってて、私、貰えなかったんです」
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