思い出の名前

24/29

7354人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ
 なんと返していいかわからなくて、私はまた曖昧に相づちをうった。 「彼とはすぐにダメになって……、それでも私は、祐司を1人で育てるんだってはりきってました。高校も辞めて、働いて……」  ……そりゃあ。  子供を捨てたんだもん。  それなりに事情はあったんだろうけど、ユージを見てきた私は簡単に「大変でしたね」なんて同情できない。   「だけどある日、急に……糸が切れちゃったんです」  ユージのお母さんは、淡々と言葉を続ける。 「突然、もう……何もかもが嫌になって、祐司さえいなければって、泣いて叫んで。衝動でした、気がついたら、私はあの子を施設の前に置き去りにしてたんです」
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7354人が本棚に入れています
本棚に追加