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小さく消え入るような声で、けれどはっきりとお母さんは言った。
「あなたの手を離して、本当にごめんなさい。あなたをおいて逃げたとき言った言葉を、ずっと後悔してた」
ユージは、お母さんの正面に立った。視線はあわないけれど、ちゃんと心は向かい合っていると思う。
「あなたなんていらない、産まなきゃよかった、愛してなんかない。自分が言った言葉を、一言一句忘れずに覚えてる……」
もう一度「ごめんなさい」と呟いてから、お母さんは握りしめる手に力を込めた。
「次に会えたら、全部嘘だっていいたかったのに……。あなたを忘れた日はなかった、思い出さない日はなかった……。祐司……」
愛してる。
掠れるよう声で、その短い一言が響いた。
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