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腕をくんで、少し鼻の穴を膨らませながら、ユージがいう。
……ユージのくせだ。
真剣な話をするときに、必ずユージは鼻の穴を膨らませる。
なにげない日常に帰ったみたいで、私は少しだけ肩の力を抜いた。
『神様の声みたいのを聞いてな。オレはこの世に引き止める糸ってのが細いらしい』
「糸?」
『まあ、オレの事を思ってる人間が少ないんだと』
なに、そのファンタジーな話。
『こういう時には、その糸がオレをこの世にひき止めてくれるはずらしい』
「でもユージはその糸が細いから死にかかってるわけ?」
『そう』
そうかそうか、なるほどね……。
って、納得できるか!
『っておい、チサ! どこいくんだよ』
「安定剤もらってくる」
やっぱり幻覚を見てるんだ、私。
だってあり得ないもん。
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