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それが決してふざけた口調ではなかったので、私はすぐに言葉を返せなかった。
『タイムリミットは、午前10時だ。残り時間は6時間きってる』
「10時!?」
そう言えば、慌てて飛び出していったから正確な時間を聞き忘れてたけど。
いくらなんでも短すぎる!
『オレさ、お前が飛び出して行ったまま帰って来なくて、もう会えないんじゃないかと思った』
ユージが、手を私の肩に伸ばす。決して触れあわないそこから、確かに熱が伝わってくる気がした。
『こんな事になってからでも、母親に会えて嬉しかった。ありがとう、チサ』
だからもういいんだ、とユージが静かに呟く。
『変に期待させて、悪かった。でも、オレは最期はお前といたい』
ぐらり、と。
私の心が揺らぐ音がした。
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