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病院の外に出ると、パラパラと小雨が降っていた。
私は正面入り口の前まで移動して、置かれたベンチに腰かける。
取りあえず、電話帳の上からかけていこう。
焦る気持ちを押さえながら携帯を操作して、私はまず1つ目の絶望に突き当たった。
「……少なすぎる」
ユージの付き合いの悪さは、よく知ってる。
それにしても……。
「23件しか入ってないじゃん」
そのうち、10件まではお店の名前だ。仕事先とか、お弁当屋さんとか。
ちなみに、私も知っている名前も幾つかある。
ユージが育った施設の責任者の高田さん。すごく嫌な人で、ユージともとても仲が悪い。
ユージが施設の外に出る際にお世話になった結城さんは、仲が悪いわけじゃないけど、帰省中だったはず。
1人、また1人と可能性が消えていく。
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