7354人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ
携帯を投げつけたくなる衝動を押さえて、電話帳の中の知らない名前を探す。
最初に目についたのは広瀬と登録された名前。
取りあえず、電話をかけてみないとはじまらない。
不安と緊張で飛び出してきそうな心臓をなだめて、ボタンを押す。
ワンコール。
ツーコール。
虚しく冷たい無機音が耳に響いて、間もなく留守電に入る。
……よく考えたら、こんな時間寝てるに決まってるよね。
でも私には、朝を待つ時間がないから。
挫けずもう1度、また1度とかけ、自分でも何度かけたか分からない頃になってようやくコール音が途絶えた。
『うるせぇよ!』
いま何時だと思ってんだ!
と怒鳴る声は男の人のものだった。
最初のコメントを投稿しよう!