絶望だらけのパンドラ

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「あの、朝早くに申し訳ありません」  まさかユージの携帯から女の声が聞こえるなんて思わなかったんだろう。  電話の向こうの人が息を飲むのが伝わってきた。 「実は、中野が昨日事故にあって」 『……事故に?』  不機嫌を隠そうともせず、ぶっきらぼうに返してくる。 『悪いの?』 「いま、意識が無い状態です」  電話の相手は『そう』と短く切った。 『じゃあ今日は、仕事これないんだね』 「……え?」 『取りあえず有給休暇使いきるまでに帰ってこなけりゃ、辞めてもらうしかないかね』 「あの……」 『あんたも中野の何かしらないけど、もっと常識的な時間にかけてきてよ』  ガチャ。  と聞こえた音が電話を切る音だと気づくのに、少し時間がかかった。
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