絶望だらけのパンドラ

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 1人、また1人と減って、私は携帯を操作する指を止めた。 「あと、1人」  最後に液晶に浮かんだ名前は、たぶん私も聞いたことがある。    確か同じ職場の同僚で、ユージと飲みにいってたこともあるような。  ワタル、と3文字で登録された名前には、親しみを感じ取れないこともない。  私は一度大きく深呼吸をしてから、発信ボタンを押した。  お願い、お願いします!  電話に出て!  祈るように、相手を待つ。  コール音が1回なり終わるごとに、寿命がすり減ってしまう気がした。
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