絶望だらけのパンドラ

16/23
前へ
/130ページ
次へ
 話してダメなら、縛り付けてでも連れてくる。  その決意が伝わったのか、思いきり動揺する声が聞こえたけど、知らない振りをして電話を切った。  たぶん、走れば15分ぐらい。  タクシーを呼んでる間につく。  ふと見上げた空からは、少し強くなった雨がしつこく降り続けている。  傘なんてないけど、構ってられない。  早く、早く連れてこないと。  ただその一心で、私は走り出した。  全力失踪なんて、いつぶりだろう。雨がはねあがって、足元を濡らす。  このまま私の心臓が破けてしまってもいい。  ユージを助けるのが、私じゃなくてもいい。  誰でもいいから、お願いだから。  ユージを助けて。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7354人が本棚に入れています
本棚に追加