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小さな声で言えば、ユージが隣に降りてきて困ったように笑った。
『だから言ったろ、バカ』
そっと伸びてくる手のひらを掴みたいのに、空を切る。
けれどユージはそれを気に止めることなく、私の髪に手を当てた。
『びしょ濡れじゃねぇか、傘ぐらいさせよ』
そんなこと、どうでもいいよ。
バカ。
そう言いたいのに、喉が震えて言葉にならない。
『笑えよ、チサ』
あと2時間しかないんだから、とユージが笑う。
2人の笑顔の時間が1秒でも長いように。
笑おうとするけど、涙が溢れる。
無理だよ。
辛いよ、ユージ。
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