100人が本棚に入れています
本棚に追加
/274ページ
澄み渡る青空の下、紅梅の枝が春の陽射しに照らされ気持ち良さそうに彩づいている。
雪解けた田の畔には、ぎっしりと小花をつけた蕗の薹の蕾が花へと変わろうとしている中、土筆の子が土を押し上げふっくらと顔を覗かせている。
枯れ松の樹液に集まる小さな虫から、春花の匂いを求めて飛び交う蝶々が待ち望んだ春を満喫している。
自然に命の息吹きが宿り、まだ戸惑いがちな春の訪れは淡く薄い霞の帯となり漂っていく。
冬から春へと変わる穏やかな季節の風に誘われるかの様に、五人の若者は様々な想いを胸に大学を卒業していく。
共に過ごした四年の月日が、季節が移り変わる様に五人の脳裏に走馬灯の如く駆け巡っていく。
共に笑い、悩んだ、笑顔と苦悩、様々な青春の光と影がセピア色のいにしえと変わり、新しい未来へと五人は旅立っていく。
過去から現在、そして未来へと五人の若者の光と影は、どの様に輝いていくのだろうか。
青い空に浮かぶ白い五つの雲は、時折はぐれながらも同じ方向へ流れていた。
春の穏やかな陽が沈んでも春の匂いが漂う街の中には、五人の若者の楽しそうな声が聞こえていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!