別れ

4/8
前へ
/169ページ
次へ
怒りで黙った私に、正樹が静かに言った。 「俺も考えてたんだよ」 「…?」 「どうしたらいいか、俺だって考えてたんだ。そしたら連絡できなかった」 「…」 「俺だって、お前からの連絡待ってたんだよ…」 静かに、でも怒りは感じない声、いやむしろ悲しそうな顔をして正樹が言った。 「もうダメなのか?俺たち…」 (ダメ…なのかな?) 私は決心してきたはずなのに、この言葉に動揺した。 私は自分のことばかり考えていた。 正樹の気持ちや状況をちゃんと考えてあげていたの? 慣れない仕事、不規則な生活。 疲れている正樹のことを、私は思いやってあげてた? 私は自分の主張ばっかりしてなかった?? 私は正樹の悲しそうなその一言に、自分自身を振り返り、返事ができなかった。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

380人が本棚に入れています
本棚に追加