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穢れた身でも
あなたと初めて会ったのは春の京…京邸でのことだった。
私は御家人に追われ、あの邸へ逃げ込んだ。
そこで私を見付けたあなたは私を捕えるのではなく…私をかばい、そして助けてくれた。
あの時はまだあなたが源氏方の方だとしらなくて…
三草山での戦の後…傷付き倒れていた私は…またあなたに助けられた…
源氏の陣で目覚めた私に…あなたが渡した石…勾玉の欠片…。
神子、あなたはあの時、既に知っていたのだろうな…私が、人ならざる身であることを…。
そしてあの陣であなたは、私をかばい九郎殿と言い争った…
熊野を訪れた時、熊野本宮の結界に阻まれ中へ入ることの出来なかった私を見てあなたはどう思ったのだろう…。
私は結界に阻まれたのに、あなたは…。
神子……あなたは、何故、それほどまでに優しいのだろう…
神子……あなたは何故、それほどまでに純粋なのだろう…
神子…。私は…
いや…この、気持ちは…馬鹿なことだ…愚かな願いだ…
誰よりも清らかなあなたと穢れた私…釣り合うはずがない…許されるはずがない…
ああ──それなのに私は…。
言えぬ想い、許されぬ想い。叶わぬ想い。
それでも…
「私はあなたを…」
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