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《ぼやき》
霖雨に包まれた平らかとは呼べぬ日々を送る中、端午の節句がいつしか自分にとって、少なくとも主体としてのこどもの日ではなくなっていたことにふと気づき、胸の内に奇妙な感慨が湧き起こってきた。そんな折の出来事。
《語義》
よろぼう【蹌踉ふ】
よろよろと歩く。よろめく。
《解釈》
[季語]五月闇〈夏〉
五月。にわかに迎えた夏日に、雨後のいきれくさい夜道を一人歩いていると、早とちりをした蝉が一匹、聞き手のいない恋歌に憂き身を窶していた。まもなく事切れることをどこかで切々と感じているだろう蝉の独唱は、まだ長い夜の闇にフェードアウトしていった。
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