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プロローグ
「生け贄はどごた!!」
地の底から響くような怒声が村中にこだまする。
「村長よ…我が贄はどうした。」
村長と呼ばれた年老いた男は竦み上がる。
「申し訳ございません。必ずしもあの双子の片割れは捕らえますゆえどうかご慈悲を…」
間髪を入れずに声の主は告げる。
「それはきけぬ願いだな、生け贄を捧げる期日は今日だ。約束は守ってもらわねばいかん。」
村長の顔色が白くなり、ガチガチとふるえだす。
逃げようとする村長に異形の獣が食らい付く。
「ぎゃぁあっ!!や、止めてくれ。わ、悪いのはあの双子の片割れだ…。」
村長は獣に腸を引きちぎられながら、うめく…
「おのれ…小娘この怨み必ずや…。」
最後の言葉を紡ぐことなく村長は息絶えた。
そして、声の主による村人の虐殺が始まる。
村は真っ赤に染まり、紅く輝いていた。
血で染まった村人の骸から深紅の蝶が飛び立つ。
ニクイ、アノムスメガ…。
サガセ、サガセ
ウラギリモノヲ、
村人の怨念をうけ蝶の体は真っ赤に輝く。
そして、蝶は眠りにつく、怨念をはらすその日まで…。暗く深い穴の底で、村人の骸と共に。
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