1.出会いはいつも突然に

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 そう思った瞬間、目の前に黒いヒト影が現れた。しかし、自転車は急に止められない。しまった!と思い、懸命にブレーキを握りしめたけれど衝突は避けられそうに無い。と、覚悟を決めていたのだけれど、来るべき衝撃がいつまでたってもやって来なかった。  なぜだろうと思って顔を上げてみると、なんとそこに居たのは、愚者愚者になった人の形をした何かだった。ヌラヌラと光ってはいるが、液体状のモノという訳ではなく、蛸やイゾギンチャクの様なウネウネと蠢く触手で出来ているようであった。なるほど、それは余程柔らかいモノで出来ているのだろう。僕がぶつかった衝撃を完全に殺し、受け止めてくれたみたいだ。さらによく見ると、その物体はこの学校の女子の制服を着ていた。つまりコレは♀であり、ここの生徒なのだろうか。こんな人外が、触手が生徒? なんだこれは。夢? 夢なの? 転校に緊張している僕が見ている悪い夢なの? 本当はまだ布団の中でスヤスヤ眠っているの?と、頭の中が疑問符で一杯になって、パニックになっていた。   「だいじょうぶですか?」 と、可愛らしい声がかけられた。しかし、周りには僕の他に誰も居なかった。だけど 「だいじょうぶですか?」と、また声をかけられた。さらに 「だいじょうぶだったら、私の上から退いてくれませんか?」 と、さっきと同じ声が囁いた。その言葉で、僕はこのモノの上に乗っていたままだということに気がついた。と、同時にこの声の主が誰なのかということの確信にも似た予感を得ていた。
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