1.出会いはいつも突然に

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 そして僕は、その声の方へと顔を向けた、未だ下で蠢き続ける謎生物(♀)の方へ。(ちなみに彼女の触手はピンクに金と銀の斑模様で大変グロテスクな色合いです。それが、制服の下は勿論、顔らしき部分は、特に元気にウネウネと動いていましたよ?)  周りを見ても誰もいないのは当然だった。なぜなら、声をかけていたのは人では無かったのだからね。そんなことを考えている時も、目の前のモノからは退いてくれと声が発せられていた。その声でハッと我に返り、漸く、彼女(?)の上から退いたのだった。彼女(?)はホッと息を吐いたようだった。だったというのは、僕が彼女(?)の方を見ないようにしていたからだ。失礼だと思ったけれど、蠢くピンク色の恐怖を正面から見るのには勇気が必要なんだ。だけど、こちらの不注意が原因で衝突したのだから謝らないと、と思い視線を上げると、そこには恐怖以上の驚愕があった。  蠢く恐怖なんてものは存在しなかった。在るのは、美少女といっても過言ではない可憐な少女の顔だった。つぶらで透き通った銀色の優しげな瞳に、スッと通っている鼻筋、形のいいピンク色の唇、肩にかかるほどの長さのプラチナブロンド、それらが標準より少し小さい顔の中に絶妙に配置されていた。見蕩れるとはこういうことを言うのだろう。僕は視線を逸らすことも出来ず、ただジッと見つめていた。そしたら彼女はただ見ているだけの僕を不審に思ったのだろう。困惑した表情になって、形のいい唇を動かして 「どうしたんですかぁ?」 と、ストレートに聞いてきた。正直に見蕩れていたと言う訳にもいかないので 「いや、その、ぶつかっちゃってごめんなさい。お怪我はありませんか?」 と、まず謝罪をした。 「大丈夫ですよぉ。こう見えても私の衝撃吸収能力はとても高いんです。電車が相手でも問題なしですぅ」 衝撃吸収能力?まぁ、怪我が無いんだったら良かった。と、安心してると、 「そういえばぁ、あんなに急いでどうしたんですかぁ?」 彼女から質問が来た。なんで急いでたんだっけ?・・・ああっ!遅刻しそうなところだったんだ。色んな意味で衝撃的ですっかり忘れてたよ。 「え~と、僕は遅刻しそうだったから急いでたんだ。今日から転校することになってて、初日から遅刻は恥ずかしいと思っててさ」 と、僕は言い訳をしてみた。
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