966人が本棚に入れています
本棚に追加
鞭のしなる音が残酷に響く。
少女の華奢な体が、容赦なく床にたたき付けられた。
「この役立たずめ! 今度やりやがったらこれだけじゃ済まないからな!!」
鞭を持った主人が、どかどかと床を鳴らしながら部屋を出ていった。
埃っぽい部屋の中で、少女は、ひっくり返ったバケツから流れ出ている水を、せっせと雑巾で拭いていた。
水を吸い込んでぐっしょりと濡れた雑巾の重さに、少女の小さな肩が悲鳴を上げる。
拭き取ったばかりで、まだ湿り気が残る床に、雑巾から滴る雫とは違う小さな滴が何度も落ちた。
あの後、少女は奴隷として、とある村の地主に拾われた。
毎日毎日主人に怒鳴られ、主婦からはねちっこい嫌がらせを受け、子供達からはいじめられ続けていた。
希望のかけらもない毎日に、少女はずっと泣き続けていた。
絶望だけが続くと、少女はいつも嘆いていた。
不器用で無遠慮で無神経な、あの男がやってくるまでは…………
最初のコメントを投稿しよう!