髑髏の炎獣

3/10
前へ
/224ページ
次へ
180センチを凌駕する長身。 すっきりと引き締まった体躯。 野獣の鬣を彷彿とさせる黒毛混じりの金髪。 18歳の年齢に相応しい精悍な顔付き。 見た目は、血気盛んな不良めいた男だ。 だが、彼には村人達を怖がらせるのに十分な物を二つ持っていたのだ。 一番目を引いたのが、右肩から左腰にかけて貫く巨大な剣だった。 峰は真っすぐに切っ先まで伸びているが、刃はそこに向かってだんだんと広がっている、ファルシオンと呼ばれる部類の剣だ。 しかし、その鍔には黒塗りされた本物の頭蓋骨があった。 柄にも握り拳の骨。峰もよく見ると大腿骨らしきものが見える。 それは、人骨で創られた剣だった。 それと、もう一つ。 彼が羽織るもの。 踵まで到達する裾を宿した真紅のロングコートだ。 彼はその袖を二の腕まで折り、代わりに、肘まで覆う篭手を装着していた。 実はこのコートこそが、彼が今いるこの地、アンゼリカ連合王国に住む人間達にとって、彼があるまじき存在だという事を示していたのである。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

966人が本棚に入れています
本棚に追加