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内宮を退出しながら、景麒は雲海を見やる。大変なことになった、と思いながらも、妙に安堵していた。
「またか、と思ったのだが…。だが、お変わりになられた……」
景麒は予王を思い出していた。
景麒は苦笑する。
予王に良く似た娘だと思った陽子は、少なくとも己と闘うことを知っていた。陽子も官に萎縮して疎んじる気配があったが、己でそれを自覚した。
それを乗り越えるために自ら動き始めた。――この差は大きい。
景麒はふと、傍らに控えている瑠珂を振り返った。
「…瑠珂、お前は」
知っていたのか、という言葉は彼女の言葉によって遮られた。
「――私の言った通りだったでしょう、台輔?彼女は予王を越える器ですよ、と。あの時、確かに私が申し上げたはずです」
景麒の思考を見たように、瑠珂は不敵に笑って言った。景麒は静かに目を閉じる。
「…瑠珂。ひとつ、頼みたいことができた」
「――仰せのままに」
瑠珂は綺麗に笑った。
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