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「それで、主上はこれからどうなさるおつもりですか?もしもよろしければ、わたしに逗留先の手配をさせていただけませんか」」
陽子は首をかしげた。
「しかし…」
「まさか浮民のように暮らすおつもりではないでしょうね?どうか、これだけは。わたしにも安心できる場所においでになってください」
「――宰輔の言うとおりですよ、主上。しかるべき指導者も付かなければ、何時終わるとも分からないでしょうに」
今まで一言も喋らなかった瑠珂が言った。その表情は嬉しくて仕方がないように緩んでいた。
「……分かった。景麒に任せる」
景麒もまた安堵したように息をついた。
「わがままを言ってすまないな」
陽子が言うと、景麒は薄く苦笑する。
「……実を申し上げれば、少し安堵しています。ですがどうか、一日も早くお戻りくださいますよう」
「うん。分かっている」
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