第1章1話 マリアーナ.

12/15
前へ
/28ページ
次へ
何故そんな簡単な事に気付かなかった? まったく…年を取ると頭が固くなってダメだ。 「ねぇ!先生?」 恐らくラッツォは今も何処かで生きている。 …絶対、絶対生きている! 人間が読める文字を書いている。 彼は人間…若しくは小人だ。 「何を思い付いたの?」 人間ならイグロス城に行った筈だ。 小人だったら…森だ。 しかし、当時は森でも今は森じゃない所が有る。 「もーいっちょ、水かけてみ  るか!」 「やめなさいよ。」 どうやって探せば良い…? どうすれば歴史の真実が見えるのだ…! 「いいだろ!年食ってるから  って出しゃばんなよ。」 「ダン?今の言葉、あなたの  お姉さんに言っても良いの  かしら?」 第一私は学校の先生という身分だ。 私事で外出するには正式に許可を取って、1週間以内に帰らなければクビだ。 イグロス城まで行くだけで1週間はかかるぞ。 「な、何だって!?ねーちゃん  使うなんて卑怯だぞ!」 「お姉さんがよほど怖いのか  しら?」 もしも無断で外出したら…いや、考えるのは止めよう。 行くとしたら無断で行くしか手段は無いのだ。 「こ、こ怖くなんかねぇよ!  女なんか怖いもんか!」 「女なんかですって?是非  お母さんとお姉さんに聞い  てもらいたいわ。」 無断外出…しくじったら終わりだ。 それに、この子達の面倒は誰が見るんだ? 「ゔ…くっそー!エミリー  のばか野郎!」 「あら、残念ね。私“野郎”  じゃないわ。」 キーンコーン   カーンコーン 私は鐘の音で我に返った。 「あっ、きょ、今日の授業は  おしまい!」 何をやっているんだ… 授業中だぞ。 これじゃ、業務怠慢だ。 「くそ~、エミリーめ~」 「先生、午後の授業は?」 「ご飯ご飯!」 「僕、遊びに行くっ。」 私は暫くして午後の授業の事を思い出したが、その時は既に誰も残っていなかった。 遅かったか…。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加