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準備は整った。
コートを羽織って城の正面から歩いて出ることにした。
夜間は裏口の方が狙われやすいので、正面の警備は昼間に比べ手薄になっているのだ。
ゆっくり忍び足で歩いていたら、誰かに見つかってしまうかもしれない。
しかし、バタバタと音を立てながら走るのは自分の存在をアピールしているようなものだ。
なるべく普通に歩くよう自分に言い聞かせ、自室から正門へ向かう。
正門の脇では、運がいいことに門番が居眠りをしていた。
門番の脇をすり抜けて城の外へ。
ここまでは順調だ。
城を出て城下町を抜け町の入口までやってきた。
子供たちには少し悪い気がするのだが、子供たちなら逞しいから大丈夫だろう。
私でなくとも教師はいるし、最悪授業がなくなってしまったとしても彼らはすぐに代わりのものを見つけるだろう。
幼い彼らの回りには楽しいことがゴロゴロ転がっているのだ。
町の入口で立ち止まり、振り返る。
そして、子供達と真面目だった自分へ。
「……さよなら。」
きっと、もう会うことはないだろう。
荷物を背負い直し、月明かりを頼りにイグロスを目指した。
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