2話 カラギ平原.

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城下街の門を出て30分ほど歩いた頃だろうか。 学校の仕事を真面目にこなしてきた日々を思い返しながら、商人の馬車が作った道を歩いていた。 ふと上を見上げると、綺麗な満月が見えた。 (城の関係者は私を追ってくるだろうか…) 何故か、月を見ていたら急にそんな考えが浮かんできた。 (…まさか。 誰に見つかることもなく出てこれたじゃないか。) その言葉で、自分に言い聞かせた。 …焦る理由など何処にも無い …焦る意味も無い、と。 しかし、その行為こそ、どうしようもなく焦っている証拠であった。 気が付くと、来ないかもしれない追っ手に怯え、慌てて鞄から地図を引っ張り出していた。 カラギ平原はS字型の緩やかなカーブを描いており、イグロスとヴァン・ダリアを一直線で結ぶとカラギ平原を通る時に比べて1/3程度の距離に縮まる。 しかし、真っすぐ進もうとすると険しい山道を歩かなければいけなくなる。 身を隠すものが何一つ無い平原を歩くか、丸腰に等しい装備で険しい山道に挑むか…。 どちらを通っても私にとって厳しい道程になりそうだ。 追っ手に怯えて逃れる術を考えていた筈だが、その場で答えが出ないまま10分以上突っ立っていた。 私を捕まえにくる人がいるとすれば、苦労せずに捕まえられそうだ。
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