始まりの日

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『お父様、お母様今日も行ってきますね。』 と少女は写真に写る両親に挨拶を告げ、一人暮らしには十分過ぎるほどの大きな屋敷を出た。 この少女、名をラピス・クロイツといい、大魔導士であるユーリス・クロイツを父に、同じく大魔導士であるシエラ・クロイツを母に持つサラブレッドの娘である。 屋敷を出て向う先は、魔導士の卵達が通う魔導士養成機関『アルテミス』だった。 アルテミスは、ランディス帝国の首都アディールに存在し、月の女神から名をつけた養成機関である。 ラピスがアルテミスの門を潜ろうとした時、ラピスには馴染みの声が聞こえてきた。   『ラピス~!おはよッ!』 声をかけてきたのは、アルテミスに通う、ラピスの親友であるリシアだった。 『リシア。おはようございます。』 『うん、おはよッ!………ラピスさぁ‥その‥』 リシアはラピスに何かを聞きたそうに言葉を濁しているのに気付いたラピスは、リシアを見て答えた。 『リシア?どうしたの?』 『うん‥あのね?ラピスはそろそろ合格出さないと…』 『ええ。解っています…』 リシアがいう“合格”とは、アルテミスに3年間入る卵達は一年に一度、アルテミス側から出される試験に合格しなければ、次に進めなくなり、もう一年留年することになるのだ。 その試験にラピスはまだ合格しておらず、期限はあと一週間と迫っていた。
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