歓喜

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あぁ、もうこんな偶然って、邂逅って、そうのたまわったのは、彼女が僕と同じフロアで降りたからであり、更なる付加価値としては、階段を上がって左手側、つまりは僕の部屋のある方と同じ区画側に足を向けたからである。 コレはもう、「赤い糸」という古典的恋愛成就の言い回しを用いる以外、僕の迸る思いを言い表すことは出来なかった。 「もはや我慢の限界だ」、「いかにもそうに違いない」、そう自作自演で宥めすかして、しかる後おもむろに腰を上げ、自分の住むマンションにもかかわらず、コソコソと扉を開け彼女の後を追った。恥も外聞もあったものではない。
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