誕生

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そして今日僕は、彼女と同じ帰宅の電車に乗っている。 コレはいつもと同じで、おそらく彼女は僕と同じ駅で降りる。 その姿も何度も目にしているから間違いない。 ただ、駅の出口は僕の使う南口とは逆の北口で、そこから先を追ったことはなかった。 今日はその先に踏み込むつもりだ。 予想通り、彼女は僕と同じ駅で降り、僕の使うのとは反対側の出口、北口へと足を向けた。 そして北口の改札を抜けた。 やっぱりそうか、と自分の洞察力に感服した。 ただ、予想が合っていたのはそこまでで、彼女の向かった先は駅のすぐ左にある地下道だった。 そこをくぐると南口に出られるだけで、地下にお店が広がっているわけでもないし、近道になっているわけでもない。 それなら、初めから南口を使えばいいだけのことであって、彼女の行動には大いなる、と言うと大げさだけど、少なくとも謎めいてはいた。
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