無抵抗の罰

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無抵抗は他人を守れない。 そう言った芹沢琉鴉の言葉は僕にはわからなかった。 誰かを守ろうなんて思ったことはない。自分でさえ、傷ついて傷ついていつかそのまま死んでしまえばいいと思っているんだから…。 傷みは生を実感させる。こんな僕でも生きているということを嫌になるくらいに。 次の日傷だらけで現れた僕を見て、篠原深薙は泣きながら僕に問いかけた。 何故無抵抗に殴られ続けるのかと…。 あんまりにも泣く深薙に僕は珍しく答えた。 「無抵抗は精一杯の抵抗だよ。死ねばいいって言い続ける僕へ、もう一人の僕からの抵抗なんだ。死ねばいいと思いながら、これほど殴られてもまだ惨めに生きているだろって…。お前みたいな奴にはわからないだろうけど」 そう言って背中を向けて中庭に向かう。 いつものように足元にすり寄ってくる猫。 尻尾はない。 体は傷だらけで片目は白く濁っている。 「それでも生きるお前は死にたいなんて考えたこともないんだろうな」 抱き上げて頬ずりすると気持ち良さそうに喉を鳴らす。 離人感。 いつからか無くした生きてるって実感。 他人に殴られるようになるまでは、毎晩手首に走る傷みで自分を繋ぎ止めた。 死にたいという思いと死にたくないと思う恐怖。 『優羽…。ママはもう生きてることが苦痛でしかないの』 頭の中でフラッシュバックする記憶を空を見上げて振り払う。 「あー!くだらねぇ」 そう叫んで目を閉じた。
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