5人が本棚に入れています
本棚に追加
学校という枠の中で日々行われる公然の暴力。
虐める方が悪いとか虐められる方が悪いとかそんなくだらない理論は無意味だ。
束縛と鬱屈から逃れるための逃避行動に過ぎない。
理由なんかない。
そんな事を地面に転がったまま考えている。
腹部に広がる鈍い痛みも今は何も感じない。
「こいつ気持ちわりぃよ。殴っても無反応だし」
僕を痛めつけている一人が呟く。
名前は覚えていないけど、多分クラスメートなんだろう。
僕にとってはその程度の存在認識。
気持ち悪い思いをしてまで殴って何の意味があるのだろう。
僕はむっくりと立ち上がり
「もういいかな?僕も暇じゃないんだ」
そう呟いて背を向ける。
その瞬間苛立った声とともに後頭部に衝撃が走った。
思い切り前のめりに倒れた僕の頭に浮かんだのは、つまらないという一言だけだ。
後頭部からの派手な出血に取り囲んでいた奴らが次々に走り去る。
「びびるくらいならやるなよなぁ」
そう呟くと同時に意識は薄れていく。
今日は課題が出てたから早く帰らないといけないのに…。
うっすらそんな事を考えた時だった。
「あなたって馬鹿なのかな?それとも極度のマゾだったりして?」
そんな聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
かろうじて目だけを向けるとふわりとした黒髪が落ちてきた。
黒髪。
というより藍色の髪。
まるで鴉の濡れ羽のようだと思った所で僕の意識はどこかへ消えた。
最初のコメントを投稿しよう!