リストカット

10/13
前へ
/59ページ
次へ
「いえ……、先程ヴィさんは私が先生に似ていると仰いましたが、ヴィさんこそ先生ににていらっしゃると思いまして」 するとヴィさんは露骨に嫌そうな顔をして「何故」と訊いてきます。 「人間を知りたいと思うその気持ちが」 私の目蓋の裏に映る少女は相変わらず暗く、しかし目だけは異様な光を灯して、自らの腕を切りつけているのでした。 ヴィさんは、私の答えに少し許、納得したようで、ふむと言いました。 「慥かに、それは私と彼奴の数少ない共通点だ――数少ない、な。一緒にされては困る」 私の両目は今、ヴィさんに塞がれているのでヴィさんの表情は見えませんが、きっと複雑そうな表情をしているのでしょう。 ヴィさんは話を戻すように言います。それと同時に、見ている光景もふぃと変わりました。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

305人が本棚に入れています
本棚に追加