305人が本棚に入れています
本棚に追加
私はビルの残骸の隙間を覗いて回ります。
「私は此処にいますか?貴方は此処にいましたか?一体何処なんでしょう。見えないのです、判らないのです!嗚呼、何処ですか!」
私はようやく眼前に茶色い物体を見付け、息を切らせながら立ち止まります。
「忘れ去られたモノは何処へ逝くのでしょうか」
私は踵を返し、先生の元へと帰ろうと決めました。
「見付からなかったと云ったら、先生は怒るでしょうか……?」
私が去った後には、コンクリートの灰色とまだらな緑に囲まれた、首のない犬の死骸が、じわじわと腐ってゆくのでしょう。
最初のコメントを投稿しよう!