合わせ鏡

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僕は目の前の鏡を見つめる。色素の薄い少年が映っていた。唇の赤さが異様に目立つ、儚げな少年であった。 その少年の後ろにはまた少年が少年が少年が少年が。つまりは少年は合わせ鏡に捕われているのだ。 僕は後ろの鏡を横目で見て、また思考を再開する。 僕の本体が脳だとすれば――脳で主に"人間"の働きを占めているのは新皮質らしい――僕は新皮質だけで生きられるという事になる。 ありったけの化学技術で、その僕自身を、溶液を満たしたフラスコに入れて。剥き出しの僕。皮膚や血管や内臓や脂肪や、いらないものを全部捨て去って一番シンプルでシャープな姿……本当の僕……。 でも本当に? それは本当に僕なのかい? きっと僕はその段階になって僕の本体はどこに有るのだと疑うのだろう。 僕をいれているフラスコは本当に僕ではないの? 僕を浮かべる溶液は本当に僕ではないの? なぜならどちらが欠けても、僕は生きられないから。 僕は、一体どこからどこまで……? 僕は鏡に手を伸ばす。
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