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けれどもヴィさんは私を抱き寄せて、「大丈夫だから」等と云います。私は震えながらも、ヴィさんの右手にあるのが剃刀ではなく、双眼鏡であることに安心と疑問を覚え、尋ねました。
するとヴィさんは、
「え?だから、リストカットの人達について知るんだろう?」
と云います。
私は勘違いをしていた事に恥ずかしくなり、羞恥で顔を赤く染め、うつ向き乍ら訊きます。
「知るって、どのようにですか?」
すると、ヴィさんは自分の目に双眼鏡を当て、腕の中の私の目を左手で覆いました。
私はヴィさんの血の匂いの中、暗闇しか見えなくなりました。
「こう、すれば良いのだ」
そして、ゆっくりと私の目蓋の裏に、ヴィさんの見ている光景が広がってゆくのでした。
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