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白い部屋に僕はいる。
無色透明で綺麗なほど、ここに汚れは存在しないのだ。
無地で白いカーテンは揺れた。
その向こうに見える窓に映るのは、嘘つきな空。
カーテンが揺れたのは多分、暑い部屋を冷やすために付けられた、クーラーの風。
僕は、産まれてから外を見たことがなかった。
「ぐ、げほっ、げほっ、」
喉を刺す痛み。
痛みを和らげるために、咳をなんどもした。
やっと痛みが引いて、僕は頭を上げる。
目の前のスケッチブックには、黒で描かれた空。
写真で見た、空だった。
「ふーん」
スケッチブックの向こうから声がする。
顔を上げて、見た。
「相沢 空(アイサワ ソラ)。現在は八歳、病気持ちでずっと入院中。足が動かず左目見えず。胃は弱く心臓が弱い。わたし初めてよ、こんな人間」
白い部屋に飛び込んで来た、金の髪がクーラーの風で揺れた。
顔は何かの資料みたいな紙でよくは見えない。
白い服で、少女体型。声も高い。
「……君は、」
「うーん、どうしようかなぁ……」
「君は、」
「悩んじゃだめだめ。わたしのやらなきゃならないことをしなくちゃ」
「あの、」
「でもなぁ、まだまだ見習いだしぃ……」
「ねぇ聞いてる!?」
「……あら」
初めて僕に気がついたみたいに声をあげた。
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