健常者との結婚

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それから将弥は店に来ては花を買い詩央里の休憩時間に一緒に昼食を摂る様になった。ある日、詩央里はどうして自分にこんなに優しくしてくれるのか。どうして自分なのかと将弥に尋ねた。将弥は「耳が聞こえないからなに?詩央里ちゃんは普通だろ?特別だなんて思ってないよ」と言ってくれた。そして将弥は「僕に手話を教えてくれないかな?」と言った。この時はまだ将弥との会話は紙に書いての紙話だった。次の日将弥が来た時、詩央里は自分の目を疑った。将弥は手話で「こんにちは」としたのだ。詩央里は嬉しかった。しかし何の反応もない詩央里を見て将弥は「あれ?違ったかな?」と慌てて鞄の中から「初めての手話初級編」という本を取り出し「あいさつ」のページを開き「こんにちは」を調べ直した。詩央里は嬉しさを隠しきれず将弥に近付き「こんにちは。ありがとう」として見せた。将弥は「ありがとう」も勉強していた様で理解でき「あっ、ありがとう」と言い「いいえ」と笑顔で言ってしまった。その日の昼食中に詩央里は紙に「どうして手話を?」と書いた。将弥は「君と話がしたかったから」と言い恥ずかしくなったのか紙には書かなかった。
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