曇天、慟哭、罪と罰。

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と言い終わらぬうちに、懐に忍ばせておいたクナイを真っ向から投げつける。 忍ならば明らかに避けられる簡単な軌道、しかしそれは間合いを詰めるだけの手段。 二つのクナイはそのまま佐助の顔面へと向かうが、それを微動だにしない手捌きで斬り落とす。 刹那、かすがの姿は横から飛び出す形で佐助の脇腹を狙ったが、さらりといとも簡単に交わされてしまう。   「…甘いね、そんな戦術じゃ」   佐助が後ろに下がった事によって、今度はかすがの方が無防備な体勢になってしまったが、すぐさま受身の態勢を取り、佐助からの攻撃を寸でのところで防御した。 真上から振り翳された巨大な手裏剣に、短刀で応戦を試みる。 力は明らかに佐助の方が上な事は明白。硬い土がじゃり、と音を立ててかすがを崖際へと追いやって行く。 此の侭では埒が明かない、とかすがは一瞬間を狙い力をわざと抜いた。 その瞬間にくるりと胡蝶の如く空を舞い、佐助の後背を突く。   「は、あッ!」   無数に描かれる格子状の流線。 それは明らかに佐助の姿を捉えた筈だったのだが、切り裂いたのは土埃と木の葉だけ。 そのわずかな間にひらりと身を翻した佐助は、かすがの鳩尾目掛けて、短刀でどん、と峰打つ。   「ぐ…ッ!」   そのまま地面に叩きつけられるのを間一髪で手をついて免れたが、喉元には先程かすがが放ったクナイが向けられていた。 ギリ、と下唇を噛むかすがに、佐助は無表情で詰め寄った。   「お前なんかにッ…私は負けない…!」 「言っただろ?俺にも護りたいものがあるって」 「私には謙信様だけが…             ッ?!」   ぐさり、と背中に突き刺さる感覚。溢れ出る鮮血。 羽のようにしなやかに舞う、先程受け流した筈の手裏剣が、時間差でかすがに猛追した結果だった。
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