願いは数多の綺羅星の如く

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  「某が…ッ、どれだけ…心配したと思っておる!丸一日目を醒まさなかったのだぞ!」  「あー、ごめんね。まさか伝説の忍と一緒に戦った後に即行で寝返られるとは思いもよらなかったからさ。…まあ、俺の油断でもあるんだけど」   ようやく俺を抱き留めていた腕が離れたかと思えば、その瞳には涙を溜め込んでいて。 せめて、溢すまいと必死なようだった。   「お主が負傷したと…伝令が来てな。その後に直ぐ行方を眩ましたというから、 この付近を探し回っていたのだ… そうしたら、お主が倒れておって…ッ」   そう言うと、俺を見付けた瞬間がフラッシュバックしたのか、遂にぽろ、と涙が布団に零れ落ちる。 真田家主がこんな事で泣いちゃ駄目でしょうが…。ただの忍であるだけの、この俺に。 でも、それだけ俺の事を大切に想ってくれている故か、と思うとこっちは嬉しくてたまらないんだけども。   「某は…佐助が居てくれればそれで良い…だから」 「だから?」 「もう、居なくならないでくれ…」   俺はポンポン、と旦那の頭を叩いて、あやす様にして抱きしめる。 昔もよくこうしてたっけ、アンタは、泣き虫だったから。   「俺は、居なくならないよ。旦那」 「…本当か…っ?」 「だって現に、今も此処に居る訳だしさ。…ま、自力で辿り着けなかったのは不覚だけど」 「ああ…、そうだな」   こうやって手の中に居る旦那は、あまりにも脆くて小さくて。 それが、まだ「弁丸様」と呼ばれていた時の、幼い旦那と重なって見えていた。 そんな俺の心を見透かしたように、旦那がうわ言の様に呟いた。   「あの時も、お主はこうやって抱き留めて居てくれたな」 「あの時?」 「…某の初陣の…、あれは、雨の日だったか」 「…ああ。」   初陣の直後、初めて知ってしまった、人を斬る事の恐怖。 俺にはそれが分からなかった。己を血で染めること、それが当たり前だと、それが忍の使命だったから。 だけど、そんな俺を。里を一歩外に出れば、疎まれるだけの、只の『兵器』としか見られなかった忍である俺を。 ちゃんと、『人間』として見てくれていたのは、旦那が初めてだったから。 誰も理解してはくれないこの気持ちを解ってくれたのは、旦那が初めてだったから。 小さな身体に抱えきれない程の恐怖から、雨の中へ逃げ出した旦那を反射的に追いかけたのも、きっとその所為。  
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