夜叉姫

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 ぬ、お客人、如何されましたかな。……ほう。――なんと、それではお客人が晴賢様の末と。いや、確かに晴賢様の面影がありますな。  そうして何故またこの山に。……ほう……ほう……敵討ち、とな。悪いことは言いませぬ、やめなされ。今まで誰ひとり、夜叉退治に出て戻ってきた者はおりませぬ。若い命をむざむざ散らすことも有りますまい。  さて、老いぼれの長話に付き合わせてしまって申し訳ありませぬ。朝は早い、向こうに布団を敷かせましょう。  ――何、障子の向こうに人影とな。今夜は随分と客人が多いようですじゃ。……髪を振り乱した角のある女と……。  流石晴賢様の血を引かれる御方。早速吉濃様がかぎつけられたようですじゃ。  そうら、戸口を叩く音が聞こえてきました。さて、お客人。  ――如何、なされます? 壱 夜叉姫 完
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