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ああ、アドバイスをしているんだと気付いた。
でも、そこでまた疑問が浮かんだ。
「面白いものって何ですか?」
当然の疑問だろう。
二つ早い電車に乗るというリスクに見合うものでなければ損することになる。
まぁ、そうでなくてもこの少女の言うことには従うつもりだったが。
「それはお楽しみじゃん。だから明日は早いのに乗りな!」
なんてマイペースな少女なんだ。
もはや言葉が命令系になっている。
変なところを気にしながら、僕は愛想笑いした。
『次は、西宮内。西宮内。』
車内アナウンスが流れると、それが合図のように同じ高校のやつらは降りる準備をする。
僕も決して例外ではない。
そして、この少女も。
「ああ、そうだ。名前教えてよ。いつまでも“君”なんて二人称使うのヤだからさ。」
「藤崎歩(アユム)です。」
「女の子みたいな名前だね。そんじゃ、入学式頑張って。」
電車が一瞬静まって、無機質な音と一緒に駅に到着した。
僕と少女は、人の波に飲まれて別々に降りていくのであった。
…僕は少女の名前を聞きそびれてしまった。
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