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「てめぇ西高の桐生だな?」
と、喧嘩を売られた。
「あ?」
数を数えると10~20。隣にいる舜治は面倒臭そうに煙草を捨てて首を回し、ゴキッと指を鳴らした。
「やんのかゴラァ!!」
いつもはクールな舜治だが、喧嘩になると人が変わったように怒鳴り声を上げる。
威嚇するような声。無駄な喧嘩をなるべく避けるために出しているらしいが、そうは思えない。
だから大体がこの一声で逃げていく。
「ぅっ・・・!!」
「ぁ゙あ゙?聞こえなかったか?やんのかって聞いてんだよ」
「お前は、伊東舜治だな?」
恐る恐るといった感じで、リーダー各のやつが尋ねる。
舜治は何も答えず、じっと相手の目を見つめる。相手は蛇に睨まれた蛙のように脂汗を流し、動かない。
「何か用か?」
「総長の命令だ。たまには顔を出せ、だそうだ」
「なんか特があんのかい?」
総長、と言われて思い浮かぶのはあいつしかいない。
一年の時に一度やりあったことがある沢渡信光(さわたり のぶみつ)。
ここいらじゃ知らないやつはいないくらいクレイジーで有名な男だった。
おれはあいつに奥歯を二本折られた。
「用件はそれだけか?・・・にしちゃぁ、人数が多すぎじゃねぇの?」
「これは別件だ。桐生、てめぇ、おれの下っぱに痛い目みしてくれたんだってなぁ?」
「あ?ぁあ・・・この間のチビか・・・。おれんとこの可愛い後輩に薄汚ねぇ真似しやがった仕返だよ。今もまだ病院のベッドの中で意識を戻さない。それにくらべちゃ、軽いもんだろ?」
ビュッと風を切り、ナイフが飛んでくる。
今まで冷静だったおれのスイッチがカチッと音を立てた。
「やるぞ」
「了解」
舜治もかけていたメガネを外す。本気モード。
瞬間、雪崩のように大量の馬鹿共が突っ込んできた。
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